保険金請求について最低限知っておくべきこと

2012/07/15

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福岡県に住むKさんは慌てていた。愛犬マロンが誤って指輪を飲み込んでしまったのだが、近所にある馴染みの動物病院は運悪く休診日。仕方なく自宅から少し離れた別の動物病院へ飛んで行った。初めて来院した病院だったが、手際よく処置してもらい、指輪は無事に取り出すことができた。

ホッとしながら待合室で会計の順番待ちをしていると、偶然にも親友のIさんが愛犬モモを連れて診療室から出てきた。聞けば、モモが外耳炎を患ったらしく、最近は時々この病院へ治療に来ているとのこと。

Kさんは、隣に座ったIさんがモモの写真入りプラスチックカードを握っているのに気付いた。

この病院の診察券かしら?と思って尋ねてみると、Iさんの答えにKさんは耳を疑った。「このカードはモモの保険証よ。コレを見せれば、会計窓口で払う治療費が3割で済むのよ」

そのカードの片隅には、ペット保険会社の名前が刻まれていた。

「3割vs.10割」保険金請求方法によって窓口負担率はこんなに変わる!

モモの保険証? Kさんもマロンのためにペット保険には加入しているが、そのようなカードは見たことがなかった。それに「実際に払う治療費が3割で済む」という点も気になった。

Kさんも今までに何度かマロンの治療費のことで保険のお世話になったことはある。しかし、それは、病院の会計窓口で支払った治療費を、Kさん自身がペット保険会社の保険金請求書に書き込んで郵送し、1~2週間後にKさんの銀行口座に送金される方法だった。

動物病院で診療後、加入しているペット保険会社に連絡して保険金の請求に必要な書類が届くのを待ち、書類が届いたら必要事項を記入して、病院で支払った治療費の領収書とともに返送する。特に難しい高度な知識を要するわけではないが、とにかく面倒なことが苦手なKさんには性に合わないらしい。実際の治療費が少額で済んだ場合にはペット保険会社へ連絡しなかったり、書類が届いてもいつの間にかなくしてしまい、保険金の請求を取り止めたこともあった。

そんな彼女からしてみれば、保険金を後から請求するのではなく、保険金が支払われる分を病院の会計時にあらかじめ差し引いて精算する方法は、とても魅力的に感じられた。

一般的な保険金の請求方法とは?

ペット保険の保険金請求では、これまでのKさんのように、まずは病院の会計で治療費全額を支払い、その後加入しているペット保険会社へ保険金を請求する、いわば「立替精算方式」が一般的だ。9社あるペット保険会社のうち、7社が立替精算方式を採用している。

この場合、加入しているペット保険の契約内容にかかわらず、動物病院の会計窓口では、治療費全額をいったん立て替えて支払う必要がある。その際に、立て替えた治療費を後日ペット保険会社へ請求するために、治療費の領収書を必ず入手し、なくさずに保管しておかなければならない。

その後保険金を請求するためにペット保険会社へ連絡するのだが、うっかり連絡を忘れていた、ということのないよう注意する必要がある。ペット保険会社によっては、保険金の請求手続きについて動物病院で治療を受けた日から30日以内などと規定しているところもある。

なお、2010年4月より新たに施行された「保険法」により、保険会社等に対する保険金請求の時効は、それまでの2年から3年に延長されている。

たったこれだけ?補償を得るために加入者がすべきこと

一方、Iさんが加入するモモの保険のように、保険で補償される部分を治療費から差し引いた残額のみを病院の会計で支払う、いわば「窓口精算方式」を採用するペット保険会社もある。

仕組みはこうだ。

窓口精算方式を採用するペット保険会社は、全国の主な動物病院と提携している。

ペット保険に加入すると、まもなくペット保険会社が発行する「ペット保険証」が加入者の手元に届く。それを提携する動物病院で治療を受けた際に病院側に提示すると、保険により補償される分を実際の治療費から差し引いた金額のみ会計の際に請求される。

保険で補償される分は、病院側が直接ペット保険会社に対して請求し、ペット保険会社は動物病院へその分を保険金として直接支払う。

したがって、加入者はペット保険会社から発行された保険証を動物病院に提示するだけで治療費の補償を得ることができる仕組みだ。わざわざペット保険会社へ連絡する必要もなければ、保険金の請求に必要な各種書類を取り揃えて送付する必要もない。うっかり保険金を請求し忘れた、なんてこともなくなり、立替精算方式に比べれば、補償されるまでの手間は大きく省かれ、ずっと手軽だ。

ただし、窓口精算方式を採用するペット保険会社の場合でも、すべての動物病院と提携しているわけではない。提携していない動物病院で治療を受けた場合には、立替精算方式と同じような手続きが必要になる。また、提携する動物病院であっても、受診の際にペット保険証を忘れてきた場合なども窓口負担軽減方式のメリットを受けられないことになる。

一般的に、自動車保険など他の保険と比べて、保険金を請求する機会が圧倒的に多いと言われるペット保険。それだけに、いざという時の会社の対応力や保険金の請求に伴う手続きの簡便さも、保険選びの重要な要素になるだろう。

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ライター紹介

石川 拓也
保険、共済関連のフリーライターです。昼間の顔は、某保険会社関連企業でアナリストをしています。1974年生まれ、男性。ちなみに、名前はペンネームです。 更新情報などを配信しますので、よろしければ、Twitterへフォローをお願いします。

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