市場シェアダントツNo.1、アニコム損害保険株式会社 – ペット保険会社研究 Vol. 1
2013/02/25
アニコム損害保険株式会社は、ペット保険業界の最大手だ。同社の事業規模は2位以下を大きく引き離し、市場シェアはペット保険全体の5割を超える。「ペット保険」と言われれば、まっさきに頭に思い浮かぶのがアニコムだ。
利用者メリットを、上位から3つあげるとすれば、以下のようになるだろう。
- 充実した補償
- 動物病院での窓口精算
- 上場会社として安定した経営状況
販売については、ペットショップ、保険代理店などを中心とした代理店網に加えウェブ販売も行う他、ダイレクト自動車保険のソニー損保と提携するなど販路も幅広く強靭だ。サービス網も全国の動物病院を網羅し、飛び抜けて充実している。
アニコムは、名実ともにペット保険業界のリーディングカンパニーである。
口コミから見えてくる、アニコムの強みと弱点
- (評価する口コミ)窓口精算の便利さは何よりも代え難い
- (評価する口コミ)無制限補償は大きな安心
- (批判的な口コミ)他社に比べて掛金が割高
アニコムに加入している人々の口コミや評判を拾い集めてみると、他社とは違ったおもしろい傾向が見える。加入を決めた理由に「知人や友人等からの紹介」をあげる意見が目につく。知人に自信をもって紹介できる質の高い保険サービスであることが良くわかる。(もっとも、他社に比べ加入者数が圧倒的に多いので紹介を受ける実数も多くなるということも念頭においておく必要がある。)
アニコムを評価する口コミで最も目立つのが提携病院での窓口精算だ。わずらわしい手続きを省いた利便性を体感すると、掛金が多少割高だと思っても他社に切り替えしようとは思わないという声もある。同社がこれまで苦労して築いてきた病院ネットワークが顧客にきちんと評価され、顧客流出の防止にも一役をかっている。
また、アニコムのペット保険『どうぶつ健保ふぁみりぃ』の最大の特長でもある「無制限の補償」を評価する声が目立つ。日数制限がないことが、治療の長期化を経験したり心配しているオーナーに評価が高い。(ただし、1日あたり限度額は設定されている。)
これら以外にも「終身補償」を評価して加入したという意見のほか、企業規模や市場シェアからアニコムに対して安心や信頼を寄せる意見、窓口精算のためにアニコムが加入者宛に発行するペット用の”保険証”に好感をもつ声など、同社に特有の高評価が多い。
一方で批判的な意見としては、アニコムの唯一の弱点とも言える「割高な掛金」についてのものが多いようだ。
一般的に、「好意的な意見」よりも「批判的な意見」のほうが書き込みやすいということを考慮すれば、実態としての顧客満足度は非常に高いと推測できる。
アニコムだから実現できた「無制限」
アニコムのペット保険『どうぶつ健保ふぁみりぃ』が、他社の保険と決定的に異なる点は「無制限の補償(日数制限無し)」だ。
アニコムを除くペット保険会社9社が販売するペット保険はすべて補償総額の上限が定められている。
『どうぶつ健保ふぁみりぃ』にも1日あたりの補償限度額が設けられてはいるが、入通院日数に制限が無い。長期治療が必要な病気にかかったり、慢性的な病気を患ったりした場合には非常に頼もしい条件だ。
現在ペット保険を販売する10社のうち7社は少額短期保険会社と呼ばれる “ミニ保険会社”で、契約者一人あたりに対する補償総額が規制されているため補償総額を制限しなければならないのだ。
損害保険業の免許をもつアニコムの場合はこうした制約を受けることはない。なお、先ごろ少額短期保険会社から損害保険会社になったアイペット損害保険も、少額短期保険時代の商品を継続販売しているため補償総額に制限がある。同じく損害保険会社であるアクサダイレクトも、現在の商品では保険金支払い限度額が設定されている。
現時点において、「無制限の補償」を提供しているのはアニコムのみということになり、同社の最大の魅力となっている。
犬猫以外も大歓迎!
『どうぶつ健保ふぁみりぃ』は、犬や猫のほか、鳥やうさぎ、フェレットでも加入することができる。犬猫以外の動物が加入できるペット保険は、アニコムを含め2社しかない。保険契約の更新はどの動物でも生涯可能だが、新たに加入できるのは犬猫が10歳以下なのに対し、鳥・うさぎ・フェレットは7歳までに限られている。
掛金は、0~1歳時で小型犬や猫とあまり変わらない。しかし、うさぎとフェレットは加齢とともに掛金の上げ幅が大きく、特に晩年のフェレットでは、超大型犬の保険料を上回る。
わずか7年、あっという間に登ったトップの座
業界のリーディングカンパニーとなったアニコムだが、その歴史は意外にも古くない。
2000年に、東京海上(当時の国内損保トップ)出身の小森伸昭氏(現代表)が中心となり、ペットのための健康保障共済制度を営む任意組合「anicom(動物健康促進クラブ)」を設立したのが始まりだ。
ペットブームに乗って順調に加入者を増やし、共済販売開始からわずか7年余で加入頭数30万頭、提携動物病院も4,000を超え、国内最大級のペット共済制度に躍進した。
この頃に、免許取得のために設立していたアニコムインシュアランスプランニング株式会社が損害保険業の免許を取得した。
免許取得と同時に社名を「アニコム損害保険株式会社」に改め、同時にペット共済制度を運営するanicomの廃業を発表。アニコム損保が共済の加入者を引き継ぎ、共済制度から損害保険事業へ移行した。
2010年には東京証券取引所マザーズに株式を上場、ペット保険専門会社では、現時点で唯一の国内上場企業である。
同社はペット関係の統計情報などを定期的にとりまとめて刊行しており、リーディングカンパニーとしての意識が高さが、このようなところにも現れている。
大躍進を支え続けた秘密兵器
短期間で一躍業界のトップに登りつめた大きな要因は、動物病院向けに独自開発したカルテ管理システム「アニコムレセプター」だろう。
同システムは保険金請求手続きの流れを一変した。アニコムレセプターの導入を全国の動物病院に働きかけ、人間の場合の健康保険と同じような仕組みを導入した。病院が保険会社へ保険金を請求し給付を受けることにより、患者の窓口負担は、保険で補填されない部分のみの小額ですむのだ。
動物病院で治療費の全額を支払い、保険金請求書を書いて保険会社に送付するのが当たり前だった時代に、病院窓口で手間なく保険を利用できる仕組みは高い支持を受けた。
【アニコム損害保険株式会社の概要】
会社名 : アニコム損害保険株式会社
事業種類 : 損害保険業
所在地 : 東京都新宿区下落合
代表者 : 小森 伸昭
上場先 : 東京証券取引所マザーズ
正味収入保険料 : 13,592百万円 〔10,858百万円〕
経常利益 : 337百万円 〔342百万円〕
資本金 : 4,700百万円
ソルベンシー・マージン比率 : 307.2% 〔482.8%〕
従業員数 : 219名
主な株主 : アニコム ホールディングス株式会社(100%)
決算月 : 3月
※2012年3月末時点の公表値に基づく。なお〔 〕内数値は2011年3月末時点のもの。
人気記事
新着記事
Categories
- ペット保険の基本 (3)
- ペット保険の選び方 (4)
- ペット保険会社研究 (1)
- ペット保険徹底比較 (8)
- ペット保険の業界動向 (4)
- 動物病院とペット保険 (1)
このサイトについて
サイト内検索
ライター紹介
石川 拓也
保険、共済関連のフリーライターです。昼間の顔は、某保険会社関連企業でアナリストをしています。1974年生まれ、男性。ちなみに、名前はペンネームです。 更新情報などを配信しますので、よろしければ、Twitterへフォローをお願いします。