活気づくペット保険業界の動向を探る<前編>

2013/04/26

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2013年になりペット保険業界が騒がしい。

まず、ペット&ファミリーが保険料値上げを伴う商品改定をおこなった。

一方、新しく市場に参入するペット保険会社が現れた。また、既存保険会社による保険料引下げや新保険商品の投入なども相次ぎ、ペット保険を取り巻く環境は大きく変動した。

老舗企業が初めて下した苦渋の決断

いち早く少額短期保険業者としてペット保険の販売を始めたペット&ファミリー、老舗ペット保険会社とも言える同社が創業以来初となる商品改定に踏み切った。

商品改定の大きな目玉は、最大で60%超にも達する大幅な保険料引上げだ。犬種や年齢により従来より安くなる部分も一部あるが、ほとんどの場合で掛金が値上げされた。ちなみに、加入件数が最も多い小型犬の場合では、年齢によって数~20%前後の引上げとなる。

これほどまでの大幅値上げにもかかわらず、同社の公表資料ではその理由が定かでない。問い合わせてみると、「お客様から頂く保険料と保険会社がお支払いする保険金のバランスが崩れてきたため」との答えが返ってきた。

決算公告でわかった掛金引上げの謎

ペット&ファミリーの売上にあたる収入保険料(収保)は、競争が激化してきたここ数年でも低水準の掛金を武器に、対前年比で6~8割増と、業界平均を上回るペースで伸びている。だが一方で、同社の経常収支は、開業以来一度も赤字から脱出できていない。掛金が安すぎるために収入が十分でなく、保険請求による保険金の支払いばかりが増加し、経営が安定しない――そんな構図が浮かんでくるが、同社の決算公告に目を通すと、違った姿が見えてくる。

支出のうち毎年最も大きなウエイトを占めるのは、支払った保険金ではない。むしろ支払保険金の2倍前後にも達する「営業費及び一般管理費」で、社員の給与や事務所の家賃等に相当する費用だ。業界最大手のアニコムと比較しても突出する値となっている。

つまり、「保険料と保険金のバランスを保つため」とする掛金引上げの根拠は、必ずしも的を得ていない。真の理由は、このままでは赤字幅が拡大するだけでいずれ経営破たんに陥るとの危機感から、創業以来の低価格路線に見切りをつけたペット&ファミリーの大胆な方針転換を物語っているものと言える。

「ワンコイン」を謳い文句に市場参入!

2012年の年の瀬、ペット保険市場に新規参入する会社が現れた。

「日本ペット少額短期保険」。ペット保険業界では、10社目の保険会社の誕生だ。すでに損害保険会社を含む9社が乱立し、激しい競争が繰り広げられる業界に、新たに参入する狙いは何か?

2013年2月20日に営業を開始した日本ペット少額短期保険は、同日、ウェブサイトを開設し、さっそくインターネット経由で保険募集を開始した。最大の武器は、ワンコイン。業界の常識を打ち破る「月額500円」が謳い文句だ。ペット&ファミリーの値上げにより競争が緩和した低価格帯を狙って勝負を仕掛けてきた――そんな見方が大勢だが、日本ペットはもっと広い視点で業界を見据える。

同社の特長は、豊富な商品ラインアップと、業界でも珍しい「谷型」の掛金体系だ。

入通院及び手術を補償対象とする標準的な補償プランに加え、通院のみあるいは手術のみに補償を限定する代わりに掛金を大幅に抑え込んだ節約プランも数多く取り揃える。また、ペットの加齢に伴い掛金は上がるのが一般的だが、同社では3歳時の掛金が最安になる「谷型」の掛金体系を設ける。同社の武器であるワンコイン保険は、3歳の小型犬が手術のみを対象とするプランに加入した場合に適用される月払い掛金だ。

ユニークな商品性だけでは安心できない

つまり、ワンコインの旗を掲げて呼び込んだ見込客に豊富なプランを提示してニーズにマッチするプランを選択させる、日本ペットの営業戦略はざっとこんなとこだろう。「ワンコイン」は大衆受けしそうなキャッチコピーであり、受け皿として並べるプランも豊富に揃えている点は、これまでのペット保険会社と一線を画す要素はある。

しかし、潤沢な経営資源を有する損害保険会社など先行する強敵を相手に規模を拡大していくにはそれだけでは不十分だ。ユニークな商品特性を活かすための営業施策こそが、同社の浮沈の鍵を握ると言っても過言ではない。そうでなければ数年後、ペット&ファミリーが来た道を日本ペットもまた通ることになりかねない。

競争の厳しい業界に敢えて産声を轟かせた日本ペット。今後の営業施策からしばらく目が離せそうにない。

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ライター紹介

石川 拓也
保険、共済関連のフリーライターです。昼間の顔は、某保険会社関連企業でアナリストをしています。1974年生まれ、男性。ちなみに、名前はペンネームです。 更新情報などを配信しますので、よろしければ、Twitterへフォローをお願いします。

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